債務危機を救う政府資本注入型マイナス金利政策についてに最新の内容を記述しております。以下は過去の記録です。
政府紙幣を発行させる政策ではありません。自国政府に貨幣を供給する政策です。
自国通貨政府供給政策は、非常に大きな経済効果をもたらします。
この記事で中央銀行の定義は広義の意味での中央銀行を指します。FRB、ECB、日本では日銀、財務省、造幣局を合わせた意味で用いています。
現在デノミネーションに関する記述に疑問を抱いたため、書き直し中です。(2011年11月29日)
自国通貨政府供給政策の経済効果
以下にメリット・デメリットを列挙してみます。
メリット
・円安が生じる。
・無税、もしくは減税ができる。
・債券の償還が容易になり、利回りが低下する。
・貨幣がより正確に景況を反映するようになるため、関税が不要になる。
デメリット
・自国通貨建ての資産が、マイナス金利分、希薄化する。 ※現在再考中 一時的に希薄化しますが、最終的には希薄化しないかもしれません。
少なくとも、デフォルトやハイパーインフレによる致命的な経済損失に比べればメリットが遥かに大きいものと言えます。
自国通貨政府供給の手順や指標などは以下のようになります。
自国通貨政府供給政策の12の手順
1 中央銀行は政府に対し貨幣供給を行う。この際、中央銀行は都市銀行に対する融資は継続する。
2 政府はこの貨幣供給によって歳入を補う。もしくは歳入の全てを貨幣供給で行う。
3 政府は適切な投資を行う。もしくは相当分の税金を無くす。
4 政府は同時に債券の償還を行う。
5 国家運営の各指標は後述する指標を基準とする
6 マイナス金利分による3%から7%相当のインフレと通貨安を発生させる
7 政策金利を上昇させる
8 銀行が政策金利上昇分のリスクを取りやすい環境を作り上げる
9 銀行から企業への融資を活発化させる
10 企業投資を活性化させる
11 雇用情勢を改善させる
12 消費、失業率、預金率を改善させる
この政策の最も重要な概念
ここでは冗長化を避けるために中央銀行と政府のみで経済を簡潔に表現しています。
・通常の金融サイクルは以下のようになります。
中央銀行 ← 政府 1,政府は国債を中央銀行に売却
中央銀行 → 政府 2,中央銀行は政府に貨幣供給を行う
・自国通貨政府供給政策では以下のように行います。
中央銀行 → 政府 1,中央銀行は政府に貨幣供給を行う
中央銀行 ← 政府 2,政府は国債の償還や減税を行う
マイナス金利の割り出し
I = 1 - TMS / (TMS + GMS) (1 - (TMS+GMS)/TMS)
I : 金利
TMS : 貨幣供給量(預金+現金)
GMS : 政府に対する貨幣供給量
インフレターゲット
IT = IR + (-I)
※この式は簡略式です。
IT : インフレターゲットIR : インフレーションレート(CPIなど)
I : 金利
政策金利をIに当てはめます。
例えば、以下の様になります。
IT = 0.002 + (-1 * -0.07)
IT = 0.072
以上の場合、インフレターゲットは7.2%になります。
筆者自身はインフレーションレートを年率3%~7%にするべきだと考えていますが、ここではわかりやすくするために7%を上乗せして7.2%にしています。
つまり、インフレーションレートが0.2%で、貨幣供給量が約1000兆円となる国家に金利-7%を適用させると、政府に対する貨幣供給量は以下のようになります。
GMS = TMS * -I
= 1,000T * 0.07
= 70T
GMS :政府に対する貨幣供給量
TMS :貨幣供給量
I :金利
T :1兆(Trillion)
A,年間70兆円を政府へ貨幣供給することが可能です。
これは日本をモデルとしています。
つまり、全ての税金を無くした上で、震災の復興にかかる費用を、全てこれだけで補うことが可能です。
当然のことながら、日米欧の債務問題を解決することが可能となっています。
GDP資産債務比率
B=(G+A)/D
G : 一人あたりGDP
A : 一人あたり家計金融資産
D : 一人あたり総債務
Bを100%から300%に設定する。
100%を切ると債務が国家の重石となります。
300%以上は債務が足りないことを表します。
現在の日本は150%前後になるため、国債を増発することが望ましくなります。
この指標は独自の国家経済分析の手法で用いたもので、基準が非常に特殊なものとなっています。前提が多いので、こちらのリンク先をご参考ください。
貨幣債券比率
MDR=M/D
MDR:比率
M:貨幣供給量
D:債券
MDR=33%~300% を推奨します。より安全性の高いレンジは50%から200%です。
300%へ近づく、もしくは超えると債券の利回りが低下します。
→国家が成長している場合は債券の利回りを抑えます。また、有効な投資先がバブルへ向かいます。
→国家が不景気にある場合、利回りが低下します。有効な新規の投資先が無く、既存の投資先が劣化するため、都市銀行が貸し渋りや貸しはがしに走るようになります。
33%へ近づく、もしくは下回ると、債券の利回りが上昇します。
→国家が成長している場合は、国債の利回りが上昇し成長が鈍化します。有効な新規の投資先や既存の投資先は十分な資金を得ることが出来ずに衰退する可能性が高まります。
→国家が不景気にある場合、デフォルトのリスクが高まります。世界恐慌や世界金融危機がこれにあたります。
貨幣劣化速度
政府への貨幣供給によって、貨幣は必ず劣化します。劣化速度の想定として4パターン挙げてみます。
ここではインフレーションレートが常0%で、-3%~-7%のマイナス金利を行うものと前提付けします。(実際にはある程度のインフレやデフレが常に生じます。)
60年 | 120年 | |
3% | 572% | 5,415.55% |
7% | 3,370% | 313,812% |
これではちょっとわかりにくいので、1年目の1円がどうなるかを表示してみます。
60年 | 120年 | |
3% | 5円72銭 | 54円15銭 |
7% | 33円70銭 | 3,138円12銭 |
筆者個人としては100,000%のインフレ、1円が1000円になるまでにデノミネーションを行う必要があると考えています。(現在の日本の場合、1円が10円になったらデノミネーションを行う必要があります。)
そのため、-7%のマイナス金利を続けた場合、104年目(1,062円)までにデノミネーションを行う必要が生じます。
実際には、常に人口などの増加に伴ってインフレは生じます。そのため、貨幣と債券の比率を整えれば、マイナス金利は0%から-7%に収まるか、そもそも行う必要がない状況となります。
通貨移行リスク
デノミネーションによる通貨移行リスクは実例を見るとわかりやすくなります。
トルコのデノミネーション
(参考:トルコ)
・2005年1月1日、トルコは新トルコリラを発行し、事実上の100万分の1のデノミを行った。2000万トルコリラ紙幣(当時は約1,500円に相当)は20新トルコ・リラになった。
2004年から2011年のトルコインフレーションレートです。
こちらは安定した2005年での推移も安定しています。
他の指標も同時期には安定しています。ただし、経常収支や貿易収支の赤字幅は近年大きく膨らむ傾向にあります。詳しくは(トルコ)を参照してください。
1970年代から2000年代前半にかけて、トルコは非常に高いインフレを経験しています。そのため、直近でのこうしたレートも歴史的に見ると安定した推移と言えます。
また、2005年のデノミネーションでは、大きなインフレを引き起こしていないことがわかります。
アルゼンチンのデノミネーション
(参考:アルゼンチン)
・1992年1月1日 アルゼンチンは「アウストラル」→「ペソ($)」(10,000分の1 USDと等価)のデノミネーションを行った。
・2002年2月11日 変動性相場へ移行
1989年から1992年1月のアルゼンチン・インフレーションレートです。
1989年には5000%を超えるインフレとなっています。
1992年1月に新通貨への移行、10,000分の1のデノミネーションを行なっています。
1992年から2011年のインフレーションレートです。
2001年12月 アルゼンチン国債デフォルト
2002年2月11日 変動性相場へ移行
2002年前後にはインフレが上昇しているスパイクが形成されています。しかし、これは1990年代のレベルではありません。
1992年から2011年のアルゼンチン・ペソ/USDレートです。
2002年2月11日には変動性相場へ移行しました。
2002年のインフレレートにおけるスパイク形成は急激な為替変動によるもので可能性があります。
ちなみにアルゼンチン経済は近年、比較的安定しています。
この例では、デノミネーション自体がインフレを引き起こす原因とはなっていないことがわかります。
他にも以下のようなデノミネーションの例が存在します。
ウクライナ 1996年 10万:1のレートで新通貨へ移行
イラクでは、これから新通貨への移行が行われます。
ベネズエラ 2008年1月1日 1000:1のレートで新通貨への移行
ベネズエラでは、同時期にインフレの急激な上昇が見られます。
ペルー 1985年 1000:1 1991年 1.000,000:1
ペルーでは金融政策の誤りや、南米の金融環境悪化に連動し、不安定な推移が相次いでいます。
ドイツ、日本、ハンガリーなどでもデノミネーションは行われています。残念ながらこちらの正確なインフレーションレートは用意できていません。
実例からは必ずしもデノミネーションがインフレを上昇させる裏付けとはなっていないことがわかります。ベネズエラなどの例では、一部の富豪による極端な富の独占など、他の要因も無視できない状態にあります。
アメリカへの適用例
アメリカへ自国通貨政府供給政策を適用させれば、現在見られる貧富の極端な格差を解決することが可能です。
アメリカの指標はしっかりと把握することができないので、完全に推測として例を作成します。
残念ながら、信頼性のないデータと捉えてください。
貨幣供給量 M2:9586.9Billion$ → 9.6Trillion$
総債務;54,568.5Billion$ → 54.6Trillion$(国債・地方債)
家計金融資産:35,2Trillion$(現金・預金・保険・年金・有価証券・株式・その他)
インフレーションレート:3.80%
GDP:14.66Trillion$
歳入:2.162Trillion$
歳出:3.456Trillion$
人口:313,232,044
→一人あたりGDP:46,802$
→一人あたり家計金融資産:112,376$
→一人あたり総債務:174,311$
・政府への貨幣供給量を求める
望ましいインフレーションレートを7%にした場合は…
-3.2%の金利を適用します。
GMS = TMS * -I
= 9.6 * 0.032
= 307.2Billion$(0.3072Trillion$)
GMS:政府への貨幣供給量
TMS:総貨幣供給量
A,年間307.2Billion$を政府へ供給可能
・GDP資産債務比率
B=(G+A)/D
G : 一人あたりGDP
A : 一人あたり家計金融資産
D : 一人あたり総債務
Bを100%から300%に設定する。
B = (46802 + 112376)/174311
= 91.318%
A,91%
債務が重石となっている可能性があります。
マイナス金利によって、債務を整理することが望ましいかもしれません。
・貨幣債券比率
R=M/D
R:比率(以下MDR)
M:貨幣供給
D:債券(地方債など含む)
R = 9.6 / 54.6
= 0.175824
A,17.58%
貨幣供給量が少ない可能性があります。
全体の傾向を整理すると、債務が多く、貨幣供給量が少ない傾向にあることがわかります。
ユーロ圏への適用例
ユーロ圏へ自国通貨政府供給政策を適用させれば、ギリシャ問題を解決可能です。
ユーロ圏の指標を列挙してみます。残念ながら正確なものではなく信頼性にかけるデータとなっています。
貨幣供給量 M3:9,755billion euro (17カ国)
総債務:
家計金融資産:
インフレーションレート:3.00%
GDP:16.07Trillion$
歳入:
歳出:
人口:492,387,344
→一人あたりGDP:
→一人あたり家計金融資産:
→一人あたり総債務:
大変申し訳ないのですが、具体的な数字が手に入りませんでした。
単純に-4%としてインフレーションレートを7%にするなら以下のようになります。
GMS = 9.755 * 0.04
= 0.3902Trillion Euro (390.2Billion Euro)
A,年間390.2Billion Euroを政府へ供給可能
現在のギリシャ国債総額が3400億ユーロとも言われていますから、3902億ユーロを年間供給があれば十分に債務を圧縮可能です。
新しいマイナス金利によってユーロ安も同時に生じますから、PIIGS以外の国家も効率的な形でGDP資産債務比率を改善することが可能となります。
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以下に下書き段階でのリンクを列挙致します。
ニューノーマル経済の構想
新マイナス金利1 新しいマイナス金利について
新マイナス金利2 具体的な例
新マイナス金利3 債務と貨幣供給量のバランス
新マイナス金利4 ハイパーインフレ
新マイナス金利5 デノミネーション
新マイナス金利6 通貨高対策
新マイナス金利7 債券は完済できるか?
新マイナス金利8 新しいスタグフレーションを想定する
新マイナス金利9 中央銀行による国債の買い取りについて
新マイナス金利10 従来のマイナス金利について
新マイナス金利11 浅はかとしか言い様のないベーシックインカムについて
新マイナス金利12 具体的なインフレターゲット
新マイナス金利13 アメリカへの適用例
新マイナス金利14 ユーロ圏への適用例