そのため、わかりやすい形に書きなおしてみます。
・誤解されている概念
現在存在する主要な経済問題は以下のようになります。
・欧米諸国の債務問題
・日本の長期低迷問題
こうした問題は、国債と貨幣供給の極端なバランスの悪さが原因です。
例を挙げましょう。
・イギリスの国債は約2300Bポンドに対し、貨幣供給量M4は約1500Bポンド。
・アメリカの国債は約14,000Bドルに対し、貨幣供給量M2は約8,000Bドル。
・日本の国債は約920兆円(T円)に対し、貨幣供給量M3+CDsが約1200兆円(T円)
なぜ、債務と貨幣供給量の比率が重要なのでしょうか?
そもそも多くの方は国債の裏付けが何であると考えているのでしょう?
よく国債は国民の資産が裏付けとか、信用が裏付けとか言われています。
しかし、曖昧にせず、実際に国債の額面を見てみましょう。
こちらは非常に古い戦前の物です。概念的には変わらないので、ここでは例として挙げます。
額面には20円と書かれています。つまりこの国債の裏付けは償還時の20円です。
ここを多くの方は根本的に誤解されています。国債の裏付けは中央銀行券です。国民の信用だとか、国民資産が裏付けと言った曖昧なものではありません。国債の裏付けは額面に書かれている数字と単位が裏付けとなります。
ちなみに、この国債は10年物で割引価格の14円で販売されました。10年後の償還価格が20円となります。この6円のズレは後で重要となります。覚えておいてください。
では、中央銀行券の裏付けが何かと言うと、
・具体的な問題点を仮定してみる
さて、ここであなたが国を治めていると仮定してみてください。
あなたは従来、金貨を通貨として用いてきましたが、これはかさばるため、金貨に相当する証書を用いるように通貨制度を変更しました。
その後、この金本位体制は経済成長の妨げとなるため、金から国債へ裏付けを変えます。
ちょっと前置きが冗長的ですが、ここからが問題です。
1年目、あなたは100円分の1年もの国債を発行し、それを販売、90円分の中央銀行券を入手します。
この時点で、国債100円分が市場に流れ、90円があなたの手元に存在することになります。
ここで、仮にあなたが実際にそのお金を使わなかったとします。(実際には多かれ少なかれ使うので、そんなことはありません。)
使わなくとも1年後には償還を迎えます。ここであなたの手元には90円しか無いので新たな100円国債を発行し90円を得て、180円から100円を支払います。
後はこれの繰り返しとなります。仮に常に100円国債を90円で販売していると10年後には1000円国債に対し900円の中央銀行券となります。この場合、国債に対し常に0.9倍の中央銀行券しか得られません。
これはあまり問題ではないように感じられますが、実際には金利の変動であったり、発行した国債を他国に購入されてしまうこともあるため、非常に複雑な形で経済を圧迫していきます。
・実例で問題点を振り返る
ここで上述した数値をもう一度見てみます。
・イギリスの国債は約2300Bポンドに対し、貨幣供給量M4は約1500Bポンド。
・アメリカの国債は約14,000Bドルに対し、貨幣供給量M2は約8,000Bドル。
・日本の国債は約920兆円(T円)に対し、貨幣供給量M3+CDsが約1200兆円(T円)
つまり、貨幣対債務の倍率は…
・イギリス 約0.65倍
・アメリカ 約0.57倍
・日本 約1.30倍
となります。ちなみに日本は国債は少ないですが膨大な海外資産を持っているので、このような状態を維持できています。
10年物の金利は以下の通りです。
・イギリス 3.75%
・アメリカ 3.625%
・日本 1.3%
貨幣供給量と債務額が乖離すればするほど、少ない方が価値のある状態となり経済を圧迫し始めます。
貨幣が少ない場合、国債の利回りが上昇します。
国債が少ない場合、国債の利回りは低下します。
極端にどちらかが片寄ると、デフォルトやハイパーインフレに陥る可能性が増します。
貨幣が少ない場合、そもそも経済市場に貨幣が流れているため、国債にお金は回りづらくなります。これにより、国債価格が額面に対し下落します。国債価格が下落すればするほど国家の財政は悪化し、経済への圧迫は増します。
国債が少ない場合、貨幣は裏付けが無いため増えることがなくなります。貨幣供給が増えなくなると市場の貨幣流動性が減り始めます。流動性が減るのは貨幣の裏付けがないため多くの地銀が貨幣を自分の金庫に蓄えるようになるためです。それでも足りないと貸し剥がしや貸し渋りを始めます。…どこかで聞いたような話ですね。
さらに極端な場合では、りんご農園で作られたりんごは廃棄されることになります。消費する人間も市場も存在するにも関わらず貨幣が無いために売れなくなり、生産物は消費されることなく廃棄されます。
一方、雇用主は報酬が払えなくなり仕事が消え、消費者は生産物を購入することができなくなり餓死を招くことになります。
こうした現象は恐慌と呼ばれるものです。恐慌は経済対策の失敗によるものであり、防ぐことは可能です。ちなみに、筆者はインフレーション、デフレーション、スタグフレーションの原因は、この国債残高と貨幣供給量のバランスの悪さが一つの原因であると考えています。
・問題を防ぐには
筆者が提案する解決策は単純です。
10年間は今まで通りの国債発行と販売による経済安定を図ります。
その後2年間で貨幣供給量と国債残高を1:1に揃えます。
具体例で述べると…
・イギリス
国債:約2300Bポンド 貨幣供給量M4:約1500Bポンド
→今後約800Bポンドを供給し国債と貨幣供給量を揃える。
・アメリカ
国債:約14,000Bドル 貨幣供給量M2:約8,000Bドル
→今後約6,000Bドルを供給し国債と貨幣供給量を揃える。
日本
国債:約920兆円 貨幣供給量M3+CDs:約1200兆円
→今後約280兆円の国債を発行し国債と貨幣供給量を揃える。
今までの蓄積が凄まじいため、各国とも2年間で揃えることは困難ですが、一旦比率を1:1に揃えます。その後、10年間は今まで通りの運営を続け、2年間で比率を揃えます。
後は、この繰り返しです。
・解決策の可用性
上述の解決策は前例が見つからなかったため、筆者が保証することはできません。
しかし、ここで基礎に戻っていただきます。
国債の裏づけは貨幣となります。
つまり理想的な考えのもとでは…
国債=貨幣 (1:1)
であることが望ましい状態と言えます。
決して現在の…
国債<貨幣、国債>貨幣
…と言った状況は安定的な状態と言えません。
・影響
経済上の問題を解決すると膨大な問題が解決します。
先進国通貨高、新興国通貨安の是正
→雇用の改善、先進国産業の活性化
→貿易収支不均衡の改善
国家財政の安定
→国債に大きく割かれていた財政が改善する
→アメリカの場合、国民皆保険も可能になる
経済を計画的に扱うことが可能になる
→意図的にバブルを起こすことも、その逆も可能になる
通貨や国債を原因とした経済の停滞が無くなる
→問題が経済の歪み以外のものへ移行する
より具体的に述べるなら…
日本の場合、雇用が増え、安定的に働くことが可能になります。少子高齢化している場合、国家の支出の増大に伴い円が希薄化、貿易に有利となります。
また、円が希薄化した場合、一次産業が重要となります。これに伴い農業が活性化することに繋がります。また自給自足の重要性が今より増すことになります。
一方で日本は輸入に向かない状態へ向かう可能性も考えられますが…、これは日本のような国にとって幸いかもしれません。
筆者は、仮に上述の解決策を用いれば、恐らくあらゆる角度から考えて、先進国各国は爆発的な成長を遂げることが可能であると考えています。
ちなみに、日本のポジションは微妙なところです。一番予想しがたい状態です。なぜならば比較的理想的な状態に近いためです。イギリスなどが最も経済を活性化することが可能になります。
・いくつかの懸念
実は上述の対策だけでは十分ではありません。
具体的な懸念と対策についてはいくつか筆者は考えていますが、曖昧な概念の域を出ません。
今後、別記したいと思います。
・結論
いくつかの懸念は存在するものの、蓄積が凄まじいため、先進国各国は爆発的な成長を遂げる可能性があります。その継続期間は国により異なります。
まず、欧州各国は乖離金額が大きいため、成長期間も長くなります。あくまでも推測ですが50年程度に及ぶ可能性もあります。
アメリカも、ほぼ同様となります。期間も長いかもしれません。
日本は若干の成長の後、欧米各国が大きく希薄化した場合、厳しい局面と逆の局面に板挟みとなります。逆の局面とは新興国各国が市場としての存在感を増すためです。
一方の新興国各国は輸出が大きく滞る局面に入ります。逆に先進国からの輸入がしやすい状況になるため、こうした状況を生かさなくてはなりません。ただ、技術的な蓄積が乏しいため、すぐに債務を積み重ねて、再び通貨安を引き起こすかもしれません。つまり比較的不安定な状態に陥る可能性があります。
新興国について言い直すと、不確実性が大きく増します。現在見られる輸出依存の産業構造は維持できなくなります。
・現在の異常な状況について
そもそも、現在の先進国各国が異常な状態であることは為替市場などを見ている方ならわかるかと思います。
イギリスに至っては産業が骨抜きになっているにもかかわらず、通貨だけが異常な価値を持っている上、異常に価値が不安定な状態となっていました。
本来、何らかの原因で不景気であるなら通貨は価値を失わなくてはなりません。ですがそうならないわけです。これは何かが原因で価値が生じているためです。
この”何か”が、国債と貨幣供給量の差によるものでした。
極端に国債よりも貨幣が少なかったため、国債の償還に大きな価値が生じてしまいました。これが貨幣価値を押し上げる主な原因となっていたわけです。
・注意
ここまで色々書いておいて、こうしたことを言うのもなんですが、以上の内容は全て筆者の勝手な推論に過ぎません。
私は実証することは出来ませんし、実際に実行に移す権限もありません。また、経済の専門家でもありません。
そのため、以上の内容は正しいと証明されたものでないことを覚えておいてください。
ご意見等ございましたら、掲示板、メールフォームをご利用くださいますようお願い致します。
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この度はコメントをいただき誠にありがとうございます。
必ずしもコメントにご返信できるかはわかりません。